<サグラダ・ファミリア聖堂>
サグラダ・ファミリア聖堂(聖家族教会)は,スペインのバルセロナに存在する,アントニ・ガウディによってつくられた,キリスト教の聖堂である。
サグラダ・ファミリア聖堂は,19世紀末より,スペインのバルセロナで,ガウディという異才の建築家によって,創造されていくことになった。
アントニ・ガウディは,1852年,スペイン北東部カタルーニャ地方のレウスで金属加工職人の子として生まれた。地元で教育を受けた後,カタルーニャ最大の都市であるバルセロナに出て専門的な建築を学び,建築家となった。以後,彼は豊かで理解のある後援者に恵まれて意欲的に活動を行い,独創的な作品を生み出していく。
ガウディが建築家として活動し始めた頃,バルセロナでは,あるキリスト教の団体によって市内に教会を建設する計画が進められており,1882年にそれが実現してサグラダ・ファミリア聖堂という名で着工された。ところが,まもなく依頼主と建築主任の間で建築の方法をめぐって対立が起こり,翌年に建築主任は辞任してしまう。ここにおいて後任の建築主任として抜擢されたのがガウディであった。当時31歳のガウディは,この大役を引き受け,以後,他の制作活動とも並行しながら,生涯にわたってこの聖堂の建築に取り組んでいくことになった。
<アントニ・ガウディ>
サグラダ・ファミリア聖堂は,「聖家族」の聖堂という意味であり,聖家族,すなわち,イエス・キリスト,養父ヨセフ,聖母マリアの家族に捧げられた教会である。
この聖堂は,中世のゴシック様式を復興したネオ・ゴシック様式を基本としつつ,放物線状のアーチを利用した斬新な形状や,神話にもとづいた象徴的表現の使用などの特徴ももっている。東・西・南にそれぞれファザード(正面部分)が築かれ,その周囲および中央にはいくつもの高い塔がそびえたち,それぞれには主題と意味が与えられており,各所には聖書の物語にもとづいた彫刻が配置されている。
このサグラダ・ファミリアは,ガウディが,キリストの世界と教えを3次元の構造によって表現しようとしたものであり,他に例を見ない,壮大かつ幻想的な聖堂建築になっている。
<受難のファザード>
後半生のガウディは,深いカトリックの信仰を持つようになり,この聖堂の建設に精力を注ぎ込んで設計と監督を続けた。ところが,1926年,彼はバルセロナ市内で路面電車にはねられて重傷を負い,数日後に息絶えた。
その後,聖堂は,ガウディの残した数少ない資料をもとに,後継者たちによって建設が進められていった。そして,それは現在もなお未完であり,ガウディの死後100年にあたる2026年の完成が目指されているが,確実なことはわかっていない。
サグラダ・ファミリアは,バルセロナとカタルーニャ地方のシンボルとなり,世界でも類を見ない,唯一無二の教会建築となった。そして,神の意志がこの世で無限に展開されていくことを象徴するかのように,その創造は今も続けられている。