ノートルダム大聖堂 

ノートルダム大聖堂

<ノートルダム大聖堂>

ノートルダム大聖堂は,フランスのパリ中心部,シテ島に建設されたゴシック様式のキリスト教の聖堂である。

「ノートルダム聖堂」という名の聖堂は,実は世界各地にいくつも存在する。この「ノートルダム」(notre「私たちの」-dame「婦人」)という言葉はキリスト教の聖母マリアを指し,その言葉を冠したノートルダム聖堂とは,マリアに捧げられた聖堂につけられる名称である。数あるノートルダム聖堂のなかでも最も有名なのが,ノートルダム・ド・パリ,すなわちパリのノートルダム大聖堂である。

ノートルダム大聖堂は,パリ市内を流れるセーヌ川の中にあるシテ島の上に建設された。12世紀半ばに着工されて13世紀中頃に完成し,以後,パリの司教座が置かれるなどフランスにおけるキリスト教会の中心的な地位にあった。18世紀末のフランス革命期に始まる反キリスト教運動によって破壊などの大きな被害を受けたが,19世紀半ばに修復されてかつての美しい姿を取り戻し,現在に至っている。

ノートルダム大聖堂は,ゴシック様式の代表として知られている。ゴシック様式は,12世紀からフランスを中心としてヨーロッパで広まった建築・美術様式である。

11世紀から12世紀に流行したロマネスク様式では,天井の重量のために,高さは抑えられ,また壁面には窓が少なくなっていた。しかし,ゴシック様式では,天井部を補強するリブ(骨組み)や建物を外側から支えるフライングバットレス(飛び梁)などの技術が導入されたことで,高さを上げることが可能になり,窓も広く取れるようになった。このほか,ロマネスク様式で使用された半円アーチに代わって尖頭アーチの形状が使用されるようになったのも特徴である。

こうして制約から解き放たれたゴシック様式の聖堂は,神のいる天上へ少しでも近づこうとするかのように高さを追求し,なかには150メートルにも及ぶ聖堂も現れた。また,内部の空間は,ステンドグラスのはめ込まれた広い窓を通じて入ってきた色とりどりの光に満たされ,天国のような空間が演出された。

ノートルダム大聖堂の場合は,もちろん高く大きいのだが,強さや鋭さの感じられるケルン大聖堂とは違って,穏やかで整然とした印象を受ける。黄金長方形・正方形・正円といった整った形状が全体においても部分においても繰り返し用いられていることで,落ち着いて調和した雰囲気がつくられているのだろう。淡いベージュ・茶の色も,穏やかな印象を生み出すことにつながっていると思う。

大きさを持ちながら,穏やかで落ち着いた優美な姿は,まさに聖母マリアの聖堂としてふさわしいと思える。

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