ハノーヴァー朝とウィンザー朝 (2013年7月22日)

<ウィンザー朝初代国王ジョージ5世>

時事

7月22日午後,イギリスのウィリアム王子とキャサリン妃との間に,第一子となる男児が誕生しました。24日には,ジョージと名付けられました。

将来は,曾祖母のエリザベス女王,祖父のチャールズ皇太子,父のウィリアム王子を継いで,イギリス王位につくことが見込まれます。

歴史

エリザベス女王チャールズ皇太子ウィリアム王子,そして今回誕生したジョージ王子ら,現在のイギリス王室は,ウィンザー朝と呼ばれる血統・家系です。

この「ウィンザー朝」という名称が使用されるようになったのは1917年からのことで,まだ100年もたっていません。しかし,実は,この血統とイギリス王位とのつながりには,300年もの歴史があります。

1714年,ステュアート朝最後の王であるアン女王が没し,彼女の子どもたちも先に死去していたことから,ステュアート朝が断絶しました。

そこで,ステュアート王家の遠縁にあたる,ドイツのハノーヴァー公が招かれてイギリス王ジョージ1世として即位し,これによって新たにハノーヴァー朝が開始されました。この王朝が現在のイギリス王室の直接の祖先にあたります。

ハノーヴァー朝は,第6代のヴィクトリア女王が死去した後に,転機を迎えることになります。

ヴィクトリア女王は,ドイツ中部のサックス・コバーグ・ゴータ公ザクセン・コーブルク・ゴータ公)の家のアルバートと結婚しており,彼女が1901年に死去した後には,アルバートとの間に生まれた息子が次の国王となりました。

この王位継承についてですが,ヴィクトリア女王の実子が継承している以上,ハノーヴァー朝の血統自体は失われていません。ただ,王家の名称というものは,父方の家の名をとることのほうが多いものです。そこで,これ以後は,父のアルバートの側の家名をとって,サックス・コバーグ・ゴータ朝と呼ばれるようになりました。

王朝の次なる転機となったのは,第一次世界大戦のときです。

1914年に第一次世界大戦が始まると,イギリスはフランスなどともにドイツと交戦することになりました。

さて,こうして国を挙げてドイツと戦い合う状況になると,イギリスの国家の象徴的存在である王室が「サックス・コバーグ・ゴータ」といったドイツの名前を冠していることは,都合が悪くなってきました。そこで,第一次世界大戦が続くさなかの1917年,王家の名前が改められ,王宮の所在地であるウィンザーが新たな名称として採用されることになりました。こうして,「ウィンザー朝」の名称が誕生し,現在でも続いているわけです。

このように,ハノーヴァー朝,サックス・コバーグ・ゴータ朝,そしてウィンザー朝は,名前こそ変化しているものの,基本的には同じ血統が受け継がれています。

今回,「ジョージ」という,ハノーヴァー朝の初代国王とも,ウィンザー朝の初代国王とも同じ名前が誕生した王子につけられたことは,王朝が継続していることを強く感じさせます。子宝に恵まれて,イギリス王室はこれからも安泰となりそうです。

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