文化という遺産 (革命暦222年ヴァンデミエール10日)

<モン・サン・ミシェル島(仏)>

文化の交流は,ある国が文化を育て,それが別の国に伝わって新たな要素をもたらし,今度はそれを受け取った国が自らの文化を発展させてまた別の国に伝える,というように,交流のなかで文化が発展していくときに,素晴らしい体験になります。

ここから考えると,文化を受容する側にとっては,自分がまだ持っていない要素を含んでいて,しかも自己を発展させてくれるものこそが求められる文化ということになりますが,その求められる文化を,十分にふんだんに蓄えているものが,世界史です。

わたしたちは,アメリカ的な現代文化には映画や生活スタイルを通じてよく親しんでいますし,あと,しいて言えば,中国の漢字や古典などの伝統的文化にも歴史的になじんでいると言えるでしょう。それと比べると,ヨーロッパの文化も直接的な関わりは少ないですし,インドやイスラームの文化などはふだんほとんど触れる機会がありません。古い時代の文化となると,なおさらです。

しかし,こうした普段関わりがない地域・時代の文化にこそ,自分がまだ身につけていない要素が存在します。そして,世界の長い歴史のなかには,私たちを刺激し高めてくれる傑作が数多くあります。

世界史の指導に携わっていて幸せに感じることは,長い時間,広い空間のなかで残されてきた,文化という世界中の莫大な遺産を手にすることができることです。

幸いなことに,この遺産の所有権は独占的でも排他的でもなく,継承の意志を持つ誰にでも開かれています。私は,世界史を専門とする者の務めとして,また楽しみとして,世界の優れた文化を紹介していきたいと思います。

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